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WITH MY CHINA TOWN
『横浜ローザ』N.Y.公演でスタンディングオベーション
五大さんといえば、ひとり芝居『横浜ローザ』。戦争に翻弄された、実在した老娼婦がモデルの物語ですよね。
五大:はい、来年初公演から20周年を迎えます。顔を真っ白に塗った老娼婦・メリーさんと出会ったのは24年前。横浜みなと祭で凛とした目を私に向けられた時、「あなた私の生きてきた今までをどう思うの? 答えてちょうだい」と問いかけられたような衝撃を受けました。以来、彼女の足跡を追いかけて取材をし、舞台に。
横浜発信のその舞台を、今年はニューヨークで公演!
五大:勝った国に、負けた国の話をするわけですから、最初はとても怖かったんです。ところがユニークな場面は大いに笑い、悲しいシーンはすすり泣き。お客様は五大路子を知らない。日本は知っていても、神奈川がどこにあるかも知らない。でもこちらが驚くほどの反応で、スタンディングオベーションまで! ニューヨーク・タイムズにも3枚の写真が載って報道されました。
日本でもニュースになりました。
五大:この横浜の物語が、一つのストーリーとして受け止めてもらえた証し。世界中どこに行っても、同じ人間として、同じ女性として、時代の嵐の中で生きる人のメッセージをしっかり伝える芝居になっていたんだと、反対に教えてもらって帰ってきました。
終戦70年の節目に、ニューヨークで公演した『横浜ローザ』。PHOTO BY MICHEL DELSOL
16歳の演劇少女の夢は、横浜市民とともに!
『横浜ローザ』初演から数年後に、横浜夢座を旗揚げ。座長を務められていらっしゃいます。
五大:実は『横浜ローザ』公演後、観客の方々に「仲間と横浜から発信するような演劇集団を作りたい」という夢をお話ししたんです。すると、一人の女性が「やりましょう」と言ってくださって。お金も人脈もない、ゼロからのスタートでしたが、「五大さんの今の熱い気持ちがあればできますよ!」と背中を押してもらいました。
横浜夢座は、私と市民の方々が実行委員として企画制作。さらに夢座倶楽部という応援団があり、当日はボランティアの方々に支えられます。そして観てくださるお客様がいる。もはや劇団ではないんです。「過去を掘り起こし、舞台にし、今に伝えたい、紡いでいきたい」と願う人たちの夢集団なんです。
五大さんの、その熱い想いの原点は?
五大:高校生の頃に演劇部に所属していました。当時は演劇も美術も全て「東京が一番素晴らしい」といわれている時代。16歳の私は「横浜だって、もっと素晴らしい」と思っていたんですね。「横浜から発信し、横浜に多くの人を呼びたい」「世界中の人にも発信していくんだ」と。その夢を、今も紡いでいるんです。
16歳の五大さんの夢を、多くの市民の方々と共有しているなんて!
五大:思い続けること、信じ続けること、本気でやることが大事ですよね。本気じゃなければ実現しません。もちろん、一人ではできませんから、感謝の気持ちでいっぱいです。
「横浜に埋もれているものを、手掘りで探して舞台にしたい」
Profile
五大路子(ごだいみちこ)
[五大路子ブログ]
http://hamonika.cocolog-nifty.com/godai/
[横浜夢座オフィシャルサイト]
http://www.yumeza.com/
[横浜夢座Facebook]
https://www.facebook.com/yokohamayumeza
神奈川県横浜市出身。桐朋学園演劇科に学び、早稲田小劇場を経て新国劇へ。NHK朝の連続テレビ小説『いちばん星』で主役デビュー。新国劇退団後も多数のテレビや舞台に出演。ひとり芝居『横浜ローザ』は初演より19年目を迎え、2015年4月にはアメリカ・ニューヨークで公演。ニューヨーク・タイムズにも大きく報道され、好評を博した。同作品で、横浜文化奨励賞も受賞。また1999年に自身が座長となり旗揚げした横浜夢座は、今年で16年目を迎える。著書に『ヨコハマメリーから横浜ローザへの伝言「白い顔の伝説を求めて」』。
受賞歴
1996年…ひとり芝居『横浜ローザ』で、横浜文化奨励賞受賞
2008年…横浜夢座の功績を称えられ、第29回松尾芸能賞演劇優秀賞受賞
2011年…第46回長谷川伸賞受賞
2012年…第61回横浜文化賞受賞
2015年…第64回神奈川文化賞受賞
*長谷川伸は、横浜市出身の小説家、劇作家。五大さんは新国劇時代から数々の長谷川伸作品に出演している。
2015年の秋、『第64回神奈川文化賞・スポーツ賞』贈呈式の様子。一人芝居『横浜ローザ』が大きく紹介された